長浜北高OBで、ノーベル賞候補と目される坂口志文(しもん)先生のご経歴とご研究テーマ「制御性T細胞」についてまとめてみました。
本年(2015年)3月に、医学に関する最も著名な賞の一つガードナー国際賞に選ばれた大阪大学の坂口志文教授。
ガードナー国際賞は、カナダのガードナー財団から医学で顕著な発見や貢献をした研究者に与えられる学術賞です。この賞は、毎年3名から多い時でも6名ほどしか受賞されず、ノーベル賞の登竜門ともいわれています。
坂口先生のガードナー賞受賞理由に「制御性T細胞」の発見が挙げられています。
この「制御性T細胞」とは?
本年(2015年)3月に、医学に関する最も著名な賞の一つガードナー国際賞に選ばれた大阪大学の坂口志文教授。
ガードナー国際賞は、カナダのガードナー財団から医学で顕著な発見や貢献をした研究者に与えられる学術賞です。この賞は、毎年3名から多い時でも6名ほどしか受賞されず、ノーベル賞の登竜門ともいわれています。
坂口先生のガードナー賞受賞理由に「制御性T細胞」の発見が挙げられています。
この「制御性T細胞」とは?
その前に、まずは、坂口志文先生のプロフィールから。
名前: 坂口志文(さかぐち しもん)
生年月日: 1951年1月19日
出身: 滋賀県
経歴
1969年 滋賀県立長浜北高等学校 卒業(第17期)
1976年 京都大学 医学部 卒業
1976年 医師免許取得
1983年 京都大学 医学部にて博士号取得
1995年 東京都老人総合研究所免疫病理部門部門長
1999年 京都大学 教授
2006年 京都大学 再生医科学研究所所長
2011年 大阪大学 免疫学フロンティア研究センター教授
2012年 大阪大学 教授
1976年 医師免許取得
1983年 京都大学 医学部にて博士号取得
1995年 東京都老人総合研究所免疫病理部門部門長
1999年 京都大学 教授
2006年 京都大学 再生医科学研究所所長
2011年 大阪大学 免疫学フロンティア研究センター教授
2012年 大阪大学 教授
主な受賞歴
2005年 武田医学賞
2008年 慶應医学賞
2012年 朝日賞
2015年 ガードナー国際賞
京大医学部卒業後、坂口先生は大学院へ進学されます。
その当時、愛知県がんセンターにいた西塚泰章先生が研究されているマウスの胸腺摘出で色々な臓器に炎症が起きる現象の研究に興味を持ったためでした。そして、愛知県がんセンター研究所の研究生として3年ほど在籍することになります。
この頃から免疫とT細胞に関する坂口先生の研究が始まりました。
しかし、1980年代は坂口先生にとって冬の時代だったと言われています。
1980年前後に注目されていたのが「サプレッサーT細胞」でした。
サプレッサーT細胞は、リンパ球の一種として考えられ、免疫反応を抑制し終了させる機能を持つと考えられていました。そして、当時は世界でも多くの方が研究をしていました。
ところが、1983年~84年頃の研究により、サプレッサーT細胞は結局存在しないという結論が導き出されたのです。
坂口先生が研究されておられたT細胞は、サプレッサー細胞とは別物なのですが、サプレッサー細胞が結局存在しないことが明らかになったこともあって、坂口先生のT細胞に関する研究までもが、冷視されるようになります。「まだT細胞の研究してるの?」といった空気が学会にあったのです。
それでも、坂口先生はT細胞についての研究を続けました。
マウスの実験を通して、自己免疫病を起こすT細胞の実在についての確信があったからです。
坂口先生は、自身の発見したT細胞を「制御性T細胞」と名付けましたが、以上のような経緯があったため、抑える(サプレッサー)と言う語を避けて、レギュラトリー(制御性)という言葉を選んだわけです。
この「制御性T細胞」が一躍注目を浴びるようになったのは、2000年に入ってからのこと。
坂口先生は、約20年間もまったく陽の目をみない研究を、地道にコツコツと続けてこられたのです。
それでは「制御性T細胞」とはどのようなモノなのでしょうか?
そもそも、リンパ球の働きについて、現在の免疫学では3つの考え方があります。
1.自分に反応するリンパ球が出てきても、すぐに壊されて排除される。
2.自分を認識するリンパ球はいるが、反応しないように不活化される
3.誰の体にも自分に反応するリンパ球がいるが、悪いことをしないように別のリンパ球が抑えている
この3つ目の説を証明するのが制御性T細胞ということです。
マウスを使った実験では、「制御性T細胞」というリンパ球を取り除くと様々な病気にかかってしまうことがわかり、逆に「制御性T細胞」を補うことで、様々な自己免疫病が抑えられることが明らかになりました。
この3つ目の説を証明するのが制御性T細胞ということです。
マウスを使った実験では、「制御性T細胞」というリンパ球を取り除くと様々な病気にかかってしまうことがわかり、逆に「制御性T細胞」を補うことで、様々な自己免疫病が抑えられることが明らかになりました。
つまり、病気になる原因として、「制御性T細胞」と、自分の体を攻撃する「自己反応性T細胞」のバランスが重要であることが証明されたのです。
その後、「制御性T細胞」による免疫制御の仕組みに注目した研究が世界中で進むようになりました。
「制御性T細胞」をうまく操作することで、様々な自己免疫病、炎症性疾患、ひいては、がんの治療の可能性が開けてきます。
坂口先生による「制御性T細胞」の発見は、まさに、未来の医療につながる画期的な医学上の発見だったわけです。
さて、今後に期待するのはノーベル賞!
先生ご出身の長浜市や母校の長浜北高でも期待が高まっていますが、現在研究活動をされておられる大阪大学からの受賞は初とのことで阪大でも話題になっているようです。
私たちの高校の先輩が、医学の分野で重要な発見をし、国際的に高く評価されているというのは本当に誇らしいですね!